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Collable年次報告[2024年度]

Collableの2024年度(2024年4月1日~2025年3月31日)の活動まとめと会計報告が完成しましたので、お知らせいたします。

代表からのごあいさつ

みなさまには、日頃よりNPO法人Collableの活動にご理解とご支援をいただき、心より感謝申し上げます。

2024年度は、私たちにとって大きな転換点となる一年でした。インクルーシブデザインやインクルーシブな場づくり、環境づくりに加え、実証フェーズの取り組みや、アクセシビリティに関する取り組みが大幅に拡充し、特に企業との協働プロジェクトが前年度と比べて倍となりました。多くのみなさまとの新たな出会いと学びの機会に恵まれたことを、深く感謝しております。

中でも印象深かったのは、アートノトでのアクセシビリティ講座です。予想を上回る多くの方々にご参加いただき、この分野への関心の高さを実感いたしました。この経験を通じて、「インクルーシブ」という概念の入口や隣接領域にある「アクセシビリティ」の重要性を改めて認識し、これらを起点としたインクルーシブな取り組みの可能性を強く感じています。

一方で、組織としての課題も明確になりました。現在、多くの活動が代表である私を中心に展開されており、より多様な人材による持続可能な運営体制の構築が急務です。特に、多様な人々と共に学び創造する場のファシリテーターの育成と拡充は、私たちの使命を果たすうえで欠かせない要素だと考えています。

来年度は、これまでの学びを活かしながら、より多くの方々と「誰もが社会に参画できる」インクルーシブな社会の実現に向けて歩みを進めてまいります。引き続き、みなさまのご支援とご協力をお願い申し上げます。

特定非営利活動法人Collable
代表理事 山田小百合

2024年度の実績

PICKUPプロジェクト

PICKUP① 芸術文化における鑑賞サポートとアクセシビリティ提供をテーマとした、アクセシビリティ講座【東京芸術文化相談サポートセンター アートノト】

「東京芸術文化相談サポートセンター アートノト」にて開催された「アクセシビリティ講座2024」の企画運営を担当。障害当事者のゲストを複数ご参加いただいたり、実際に当事者の目線を感じていただくための演出を行ったり、さまざまな芸術文化の場面における鑑賞サポートとアクセシビリティ提供をテーマに全5回のべ1,034名のお申し込みをいただくオンラインセミナーを行いました。

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「アクセシビリティ講座2024~あらゆる人が芸術文化をともに楽しむために~」実施概要

▽オンライン講座のアーカイブ動画公開中

①基礎知識:アクセシビリティを知る
②鑑賞サポート:映画館・映像上映編
③鑑賞サポート:舞台芸術編
④鑑賞サポート: ミュージアム・アートスペース編
⑤トークイベント:芸術文化のアクセシビリティの可能性


また、本講座は「配信そのものもアクセシブルであること」を目指したのも特徴の一つ。
生配信での日本語字幕対応や手話通訳者の登場、背景色や音声がなくても読みやすい字幕にこだわったアーカイブ動画の編集など、細部までこだわることで、アクセシブルなウェビナーを実現することができました。

PICKUP② デフリンピックをテーマにした、官民連携実証プロジェクト【渋谷区】

2024年度より、「Shibuya Scramble Lab(仮)」 内の実証プロジェクトに参画しています。

「Shibuya Scramble Lab(仮)」は、渋谷区の基本構想である「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」の具現化を目指し
「多様な人がつながり、受け入れ、一人ひとりの能力をひきだす環境づくり」「協働的・実験的・適応型のガバナンス」を
官民共同で推進するための実験機関です。将来的に行政運営型のイノベーションラボの設置を目指し、注力課題の特定、実証実験、R&Dなどを進めています。

2024年度の実証プロジェクトは、2025年に初めて日本で開催される「デフリンピック」をテーマに、「手話を含む多様な言語や文化が混ざり合う渋谷らしい共生の在り方」を模索する取り組みを進めています。
インクルーシブデザインの手法を活用した、カフェなどお店でのコミュニケーションのリサーチを行う街歩きのプロジェクトや、渋谷区主催のデフリンピック気運醸成のための展示イベント内での、「デフリンピック展示ツアー&交流会」の開催などを通じ、多くの気づきとアイデアを生んでいます。

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PICKUP③ 社内での「インクルーシブデザイン推進」プロジェクト参画【乃村工藝社】

空間デザインを行う乃村工藝社にて、社内のインクルーシブデザイン推進のための3年プロジェクトに参画。
2年目となった昨年度は、さまざまな領域で活動をされている5名をゲストにお招きした、2回に及ぶ社内イベントの開催と、およそ100ページとなる、実践、普及のためのノウハウや事例をまとめた資料の制作を実施しました。

乃村工藝社のみなさまとはミュージアムにおけるインクルーシブデザイン普及において、これまで様々なプロジェクトをご一緒しています。その取組を改めて振り返り、資料としてまとめることができました。

空間設計などのプロジェクトにおいて、よりインクルーシブデザインを取り組みやすくなるよう、乃村工藝社のみなさまと今後も連携をしながら、実施だけでなく知見もためていくプロジェクトにしていきたいと思います。

PICKUP展示リニューアルに向けた、インクルーシブデザイン実践

浜松科学館展示リニューアルプロジェクト【静岡県浜松市】

2025年3月の公開を目指したリニューアル第1期において、インクルーシブデザインを活用し、来館者の視点を深く理解するとともに、全職員がインクルーシブデザイン手法を体験的に学ぶ機会として、2024年5月~6月にインクルーシブデザインワークショップを実施しました。

また、一部のWebアクセシビリティの診断も手掛けました。引き続き連携を進めていく予定です。

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岩宿博物館展示リニューアルプロジェクト【群馬県みどり市】

日本史最古の時代「岩宿時代」と呼ばれる旧石器時代の資料を展示している博物館、群馬県みどり市の岩宿博物館のリニューアルに伴い、あらゆるユーザー体験を想像しアイデアを検討するためのワークショップを開催しました。

視覚障害のある方や、発達障害のあるお子さんとそのご家族をリードユーザーにしたDAY1と、市の子どもたちといっしょに博物館のアイデアを考えるDAY2で、リニューアル前の博物館で実際に鑑賞、体験しながらワークを実施。体験時の課題や、博物館に向けたリアルな期待を捉え直し、リニューアルへのアイデアが検討されました。

そのほかの主な取り組み

福山市|新しい公共施設検討のためのインクルーシブデザイン導入

広島県福山市にて、新しい公共施設設計・運営におけるユーザーインサイト獲得を目的に、3名のリードユーザーをお招きし、実際に市内の施設内での現地フィールドワーク調査を組み込んだワークショップを開催。市役所の職員の方や地域で活躍する設計事務所の方が参加し、新たな気づきや具体的な改善点やアイデアを得る機会になりました。

練馬区|文化施設向けインクルーシブデザインワークショップ

「だれもが利用しやすい施設・環境とは?」をテーマに、3日間のインクルーシブデザインワークショップを開催。主催は、練馬区の「『みる・よむ・体験する』ねりまフォーラム」で、区内の図書館や美術館の方が参加し、多くの気づきが生まれる場となりました。

▽当日の様子

インクルーシブデザイン研修登壇【島根県市町村総合組合】

島根県内の市町村職員を対象に、自治体の公共施設やサービスを考えるうえで、必要な観点を学ぶことを目的として開催されている研修に、インクルーシブデザインをテーマに登壇しました。

研修では、インクルーシブデザインに関する講義と、ミニワークショップを行い、障害がある方や高齢者、外国籍の方など市民の多様さをまちづくりに反映していくための新たな視点をもたらす機会となりました。
研修概要(資料内29ページ目)

発達障害のある中高生向けコミュニケーションワークショップの開発PJ参画

某企業内にて立ち上がった、発達障害のある中高生のための、オンラインコミュニケーションワークショップの開発プロジェクトに参画。プログラム開発、学生スタッフによるファシリテーション、運営マニュアルの作成などを行いました。

都立高校に「多様な人とチームを作る」学習プログラム提供【東京都教育庁】

Collableは、東京都教育委員会が多様な人が共に支え合う共生社会の実現に向けた取組として設立した「インクルーシブな学び東京コンソーシアム」の参加団体となりました。2024年度より、コンソーシアムが主催する『都立高校生向けの「インクルーシブ体験」プログラム』の一環として、独自のプログラムを展開しています。

Collable提供のプログラムでは、高校生を対象に立場を超えて協力・共創することの面白さを体験してもらうため、これまでとは一味違った新しい形でのワークショップを実施しています。2024年度は都立板橋高校を訪問し、授業を行いました。当日は、障害のあるメンバーをチームに加えたり、特定の条件が与えられた状況でのマシュマロタワーづくり競争を実施しました。

開催の様子(p.6~)

2件の「Webアクセシビリティ・ユーザビリティ診断」の実施

・ 某製薬会社のコーポレートページ|ツールチェックにて40ページ、ユーザーチェックにて8ページの診断を実施

・ 東京芸術文化相談サポートセンター アートノトの団体ページ|ツールチェックにて40ページ、ユーザーチェックにて8ページの診断を実施

「日本デジタルゲーム学会」編集委員会事務局を担当

日本国内におけるデジタルゲーム研究の発展及び普及啓蒙を目指し設立された「日本デジタルゲーム学会」の編集委員会事務局を担当し、論文誌の進行管理などを行いました。(Collableは2014年度より編集委員会事務局運営を担っています)

詳細情報公表前のプロジェクト

そのほかにも、某お菓子メーカーでのパッケージ開発プロジェクトなどをご一緒しました。商品・サービス開発のプロジェクトは、参画してから商品が世に出るまでが数年単位になるものもあり、現在は情報公開を待つ状況です。リリースを心待ちにしています。

主催イベント

2024年7月 Collable × 公共とデザイン|合同採用説明会
2024年9月 Collable × 公共とデザイン|合同活動説明会「共創のみちすじを描く、プロジェクト・ファシリテーションの実践」
2025年3月 ワークショップ型イベント「多様な人たちとの協働を実感できるワークショップとは?」
2025年3月 オンラインイベント「Collable質問箱」回答セッション 

イベント登壇・メディア掲載

2024年度は下記のイベントに登壇、メディア掲載をいただき、Collableの取り組み・考え方をより多くの方に広める機会となりました。

メディア掲載

2025年3月 経済産業省によるレポート「経営戦略としてのインクルーシブデザイン」に鼎談が掲載
https://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/kyosoryoku/oshirase/250312_1.html

イベント登壇

2024年7月 桜美林大学「倫理学概論」(田中一孝先生)授業にてゲスト講演

2024年10月 東京都教育委員会主催「視覚・聴覚障害者教養講座」に登壇
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/lifelong/learning/seminor_guide

2025年1月 オンライン配信「みんなでアクセスを考える vol.2」にゲスト出演

会計報告

収入の円グラフ。1973万円に対し、会費・ご寄付が0.8%、事業収益が96.6%、その他収益が2.7%という内訳になっています。
費用(支出)の円グラフ。1357万円を、管理費と事業費に大きくわけます。事業費は全体の90.9%で、その内訳が人件費が22.9%、委託費が49.3%、その他経費で18.6%です。残り管理費が9.1%で、その内訳が人件費0.6%、委託費0.6%、その他経費8.1%です。

支援方法

ダイバーシティ&インクルージョンの実現を一緒に目指しませんか?
Collableでは「ために」から「ともに」を実現していきたいと思っています。

◎寄付する
1回のみの単発寄付もしくは継続寄付をお選びいただけます。継続寄付の場合月額500円からご支援いただけます。ご自身に合ったご支援方法で、ご協力いただけましたら幸いです。
https://collable.org/donation

◎企業・団体の方へ
社員参加型のワークショップや社内研修の実施、インクルーシブデザインに関連したプロジェクト実施、障害のある若者の採用に関するご相談やインターンシップの実施、そのほかイベント登壇、講演など、さまざまな方法で協働を進めています。ご検討段階からお気軽にご相談ください。